今の時代に大学院課程で文化を超えた実践と連携が必要なのはなぜか:希望と野心の目指す先とは?

ポール・ヘイウッド
ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校
アート、パフォーマンスおよびプログラム X 美術学部長


何もない。希望もない。野心もない。特別な目的もない。

文化への熱い思いや意欲を失わせるネガティブで人を萎縮させるような言い方だ。あるいは、それは文脈から生まれ出た言葉なのかもしれない。

東京藝術大学とロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校は芸術とデザインを専門とする教育機関で、どちらもその世界的な影響力、輝かしい功績、同時代の文化的景観への関わりの深さなどにおいて評価されている。私たちは国際パートナーシップ・協力体制という領域で個性を発揮していくため、連携することを選択した。文化的・社会的変化を生み出す手段として、学生の持つ力と協力体制を前面に押し出すことにした。相互承認に向けて長期的な取り組みを開始し、価値と視点の丁寧な交換につなげていく。未来を見据えたShared Campus(シェアドキャンパス)で経験から知を育てていくことを視野に、専門性を持った他大学と積極的かつ戦略的に連携の輪を広げている。

私たちはこれらのことを、特別な希望や確固たる野心を抱くことなく、目的なしにやっている。

多様性や様々な視点に立脚しない「正統派」の立場や支配的な声を積極的に疑うべき時代はとっくに過ぎた。何か一つのことを目指す時代は終わったのだ。なぜならすべての可能性を想像しなければならないから。時代は今、ポジティブな行動を積み重ねるその過程に希望を見出す。次世代の人々、学生たちは、野心的な目標を持たずとも行動できる。即時性があるからだ。彼らの努力や言葉は「今」に意味を持つ。特定のゴールはない。代わりにそこには複数の視点と複数の解があり、それらがより平等な環境と社会のあり方を要求し、ポジティブな成果を公平に分配することを求める。

文化を超えたコラボレーションは必要なのではない、必要不可欠なのだ。私たちが人類を信じるなら、そこに国境はない。私たちがグローバルな解決策を必要とするなら、国をまたいだコミュニティが必要だ。私たちの未来を保証するためには、個人がそれぞれの現実から考えられることが重要だ。そして私たちが教育に情熱を注ぐなら、自分たちの優先順位の外に出て学ぶ必要がある。