東京藝術大学
グローバルアートプラクティス専攻教授
「私たちの対話はinefficientなんです。多分、ここにいらっしゃる大学の皆さんは efficientなことを求めていらっしゃるとは思いますが……笑」。先日のある国際フォーラムでのルアンルパ代表アデ・ダルマワンの発言だ。
ルアンルパが提供する価値観は多様で寛容で、対峙するような結論を前提とするのではなく、対話を続けるプロセスそのものを重要視している。そこには歴史的、文化的な背景がある。30年以上独裁政権が続いた90年代末、インドネシアをアジア通貨危機が襲いインフレと失業、社会不安が増大した。5人以上人が集まるときには届け出をしないと逮捕されるような時代。社会システムを与えられたものではなく、自分たちで作り上げなくてはならないと学生たちは立ち上がった。ルアンルパの活動もそのときに始まった。1万3千以上の島と500以上の言語が存在し、多様性を持つインドネシア。そこでは違いを認めながら対話をすることこそが重要だ。
ルアンルパはまず自分たちのスペースを確保し、そこにまず「リビングルーム」を作っていった。最初は四畳半ぐらいの大きさから(「ルアンルパ」 はインドネシア語で「部屋の形」を意味するという)。そのときからずっと対話が続いている。2022年の「ドクメンタ15」のアーティスティック・ディレクターに選出されたルアンルパは、ドクメンタに特別なものを計画するのではなく、カッセルに彼らの活動そのものを持っていくという。彼らのシェアの思想を表した「ルンブン(米倉)」。それがこれからの時代の社会づくりにじっくりと影響を与えていくだろう。世界中から注目され、大忙しの彼らが、ここGAPで1週間、ワークショップを行なってくれた。この種はどのように育っていくだろうか。
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授業実施: 2019年10月17日- 21日
教員: イスワント・ハルトノとレザ・アフィシナ(ルアンルパ)
特別公開講義 | ルアンルパ:スペース: 知識と経験を共有することに参加する形と場
会場:東京藝術大学 取手キャンパス